2018年6月16日土曜日

迷子のコピーライター

自分の本を初めて出した。発売日は6月19日。見本が届いた。
タイトルは『迷子のコピーライター』という。
イースト・プレスの編集者の高部哲男さんから話をもらったのが2016年7月28日。
あまりにうまい話なのではじめは出版詐欺かとも思った。
「本を出しませんか?」と言って制作費として著者からお金を掠め取ることが
あるらしい。しかし、イースト・プレスはちゃんとした出版社であり高部さんはいい人だった。仕事の隙間をみながら書き、ほぼ2年、この本に費やした。

広告関係者が本を出すとなると、
広告の作り方、コピーの書き方など実用書がほとんどである。
もちろん、そういう本も大切なのだが、
そうじゃない本を出してほしいというのが高部さんからの依頼だった。
「日下さんは迷いながら仕事をしている。その迷いをそのまま出す方がおもしろい」と。
だから、タイトルもこうなった。

自分でいうと恥ずかしいが自身の自叙伝である。
自分の半生がここに書かれている。
そんなの興味ないという人がほとんどだと思う。
ぼくもそう思う。誰かぼくの人生を知りたいのだと。
だから、せっかく読んでくれた人に退屈させないよう
自分の人生の持ちネタをすべて棚おろした。
大学の時のユーラシアを陸路で横断した。ロシアでスパイ容疑で逮捕された。
チベットで鳥葬を見た。アフガニスタンでタリバンと2人乗りした。
そして、会社に入った。悩んだ。つまづいた。なんとか結果を残した。
病気になった。身内にいろんな不幸が起こった。
仕事に復帰した。商店街ポスター展をした。UFOを呼んだ。
書いて問題のない持ちネタはすべて注ぎ込んだ。
自身の言葉の技術を最大限に駆使した。

表紙のデザインは会社の後輩の市野護くん。
三戸なつめちゃんのジャケットも一緒に作った仲良しの後輩である。

帯の文章は都築響一さんと三戸なつめさん。ぼくが背伸びせずお願いできる関係性のある、特に素敵なお二方に書いていただいた。

都築響一さん
広告って、いつも上から目線だ。「これがいいんだから買え」みたいな。でも日下くんだけは、いちばん下のほうでうごめいているなにかをぐっと押し上げて、僕らに見せてくれる。おもしろい広告は、本気でおもしろがってなくちゃできない。どんなに巧妙につくろっても、見るほうにはちゃんとわかるからと、日下くんは教えてくれる。広告業界人にとって、この本はすごく苦い薬か、避けて通りたい正道なのだろう。   


三戸なつめさん
日下さんとの出会いは衝撃的でした(笑)。 自分の考えの斜め上をいくというか、こういう発想があるんだと。 ただかっこいいとか素敵ってだけじゃなくて、面白さだとか、“超違和感" なところを引き出してくれて、それが今につながっているようにも思います。


本は332ページオールカラーだ。分厚い。
もう二度と本は出せないかもとすべて入れた。出し惜しみなしだ。
巻末には296点の商店街のポスターと、
本編とは別に自身が仕事で得た、よいプロジェクトを作るコツやエッセンスをビジネス書っぽくまとめている。自分の仕事や人生に応用しやすい形となっている。
しかし、できれば最初から読んで、そのあとに付録を読んで欲しい。
その方が、心にずっと残り続ける。自分の血と肉となる。




カバーを外すとイラストが現れる。
これは会社の後輩、小路翼が描いてくれた。


非常に緻密なイラストで時間をとらせてしまった。
数日間、小路くんはずっとぼくを書いていた。
きっとぼくが嫌いになったのだろう。

ぼくの人生は、ずっと小説に影響を受けてきた。
だから、ぼくの本も小説のようになっている。
物語がたくさんある。物語で人に何かを伝えたかった
物語の集合体。 だから、こんな本となった。
数日後、書店に並ぶ。ぜひ手に取ってほしい。

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