講義があった。
校門をくぐり、校舎に入ると、まずは通されたのは応接間。
中学、高校の頃、こんな場所に誰が入るんだと思っていたが、
こういう機会に誰かが利用することになるのかと待ちながら考える。
美術系の高校らしく、彫像と絵画が入口にある。
廊下には作品がいくつか展示されている。悪くない。
実習室だろうか。作品を作りやすそうな大きな机。
トイレは自分の高校時代から変化がない。
和式のみ。ウォシュレットなんて期待したぼくが甘かった。
これがぼくを講師として読んだ先生である。
長髪のファンキーな先生である。
出会いは文の里商店街であった。
先生が生徒十数名を引率してポスターを見ているところに
ぼくが声をかけ、ポスター展のことをあれこれと説明していると、
よかったら講義でも、という話になったわけである。
先生の髪型はやはりすごい。
たくさんの高校生が2時間話しっぱなしの講義を熱心に聴いてくれた。
将来の夢をはっきりと持っているコ、ぼんやりとしてるコ
作品を熱心に作っているコ、授業で欠点をとりたくないから作っているコ、
みんな学業への取り組み方はバラバラであったが、みんなピュアだった。
「私の夢はアートディレクターになることです」とまっすぐな瞳で言われたぼくは、
照れて目を伏せてしまった。
そうか、周りにたくさんいるアートディレクターは憧れの職業なのか、
コピーライターもそうなのかな。
プロ野球選手、ミュージシャン、お笑い芸人、作家、
みたいな大それた職業じゃないけど、
ちょっとばかしは夢を与えられる仕事についているのだな、
それは、商店街ポスター展をして初めて気づいたことでもあり、
少しは自身の職業に誇りを持てるようになったのである。
そして、夢を与えることができる職業であるということに誇りを持ち、
夢を与えられるような仕事をきちんとし、
夢を壊すような仕事はしてはいけないな、と自戒するのであった。
とてもいい刺激をもらったな。ありがとう、高校生。