小樽運河にやってきた。
風光明媚な気もするし、ただの運河のような気もする。
とはいえここが小樽でいちばんの観光スポットだ。
国籍を問わず様々な人が集合写真を撮っている。
橋から海を見ているとおっさんが堤防を越えて何かをしている。
そしておっさんが電話をしはじめた。
運河におちてしまうかもしれないような場所で。
これは事件である。

隣では横目を気にしながらも釣りをしている。
現場へ急行する。どうやら韓国からきたこの女の子が
デジカメを落としたようだ。
親切なおじさんはこれを拾ってあげようと一生懸命なのである。
竿の先にバケツを括り付けてとろうとしている。
運河は深く、汚く、寒い。体を乗り出し決死の救出劇である。
どうも光が入るとデジカメの位置がわからないらしく傘をさして暗くする。
見ていられないのでぼくが傘持ち役をする。
女の子は「もう大丈夫です」と言っているが
おじさんが「いいよ 拾ってやるから」とがんばっている。
船が通って水が濁ったため、小休止。
そこで、おじさんが話しかけてきた。
「あんた、どっから来たの?」
「大阪です」
「大阪か 品のない街だな
おれがいたときは 3車線の車線の両側2車線に車を止めてたぞ」
「今はもうないです」
「取締りがきつくなったからだろ、まったく大阪人は」
いきなり、大阪ディスりだ。
このおじさんがいい人がどうかわからなくなってきた。
「あとはやっとくからにいちゃん遊んできていいよ」
おじさんのやさしさからか大阪人が嫌いだろうか
とりあえずぼくはここを去った。 (港町 小樽)