なにやら路上でブツブツとおじさんが話している。
「キリスト」「キング牧師」という単語は聞こえたが
あとはなにを言っているかわからない。
酒を一口飲む。
おじさんの調子が上がってきた。
神と対話しているようだ。
いや、神の落語のようでもある。
アングルを変えて正面へ回ってみる。
おじさんは高座で演説を続ける。
風貌がそう思わせるのか、
きっとキリストも路傍でこのように教えを説いたのだろう。
指を上にかざすとハトが羽ばたいた。
おじさんは聖者かもしれない。
話しかけるとおじさんはチャーミングだった。
なまりがあまりにきついものでなにを言っているかよくわからない。
出身をきいてみると奄美大島だと言う。
どこかで聞いたことがあると思ったのは鹿児島弁に近かったからだ。
おじさんは、このように街へ出ては時々、神の教えを説くとのこと。
むしろ、どんどん写真を撮って広げてほしいと。
写真を撮らせてくれたお礼に「これでお酒でも飲んで」と500円手渡した。
「あんた神様じゃ、そういえば風貌も似ておる!」と
大声でお礼をされ、見送られながらこの場を去った。
ぼくは神にはなりたくなった。
(堂島 大阪)